土地の無償利用と特別受益
皆様、銀座法律事務所所属の弁護士梅林です。
既に9月も中旬となっておりますが、こちら東京では、まだまだ真夏日が続いております。
皆様、体調にはお気を付けください。
さて、今回は、土地の無償利用と特別受益について書きたいと思います。
特別受益は、共同相続人間の公平を図るため、特別な受益(贈与)を相続分の前渡しとみて、計算上贈与を相続財産に持ち戻して(加算して)相続分を算定するという制度です(民法903条)。
土地上に相続人の所有建物がある、被相続人所有の土地の無償利用の場合、被相続人が相続人に対し、土地の無償利用の権利を設定すること自体が特別受益となります。
これは、建物が存在する、土地の無償利用の権利が付着した土地は、換価がされにくく、その分、土地の価値が減価するものと評価できます。
他方で、建物所有者である相続人は土地の無償利用という利益を得ております。
そのため、この場合、被相続人から相続人に対し、土地の無償利用の権利相当額の利益が無償で贈与されたと同じだということで、土地の無償利用が特別受益に該当することになります。
土地の無償利用の権利相当額の利益の評価は、一般的には、木造や軽量鉄骨の建物であれば、土地更地価格の1割~2割程度、重量鉄骨やコンクリート造りの建物であれば、土地更地価格の2割~3割程度でなされます。
なお、上記土地の無償利用の権利相当額の評価において、他社に賃貸した場合の相当地代額を特別受益の額とすべきという主張が見られますが、一般的にはその主張は認められません(東京地判平成15年11月17日)。
被相続人が無償で土地利用を許す場合は、相続人からの扶養の負担を期待している場合も多く、建物所有の相続人において被相続人に対する扶養の負担があるのであれば、土地利用は実質的には無償ではないため特別受益には該当しない、あるいは特別受益として相続財産に加算して相続分を算定することを要しないという持ち戻しの免除の意思があったということも十分に考えられます。
被相続人の土地上に、相続人が、土地の使用料を支払うことなく建物を建築するという例はよく見受けられますので、そのような事案でお困りのことがあれば、是非専門家にご相談頂ければと存じます。


