遺産分割調停等における家財道具の取り扱い
皆様、銀座法律事務所所属の弁護士梅林です。
今年は例年より早く、インフルエンザも流行ってきているという報道もありますので、皆様、体調にはお気を付けください。
さて、今回は、遺産分割調停等における家財道具の取り扱いについて書きたいと思います。
遺産分割調停等で言われる、家財道具は、一般的には日常生活に使われる家庭用財産のことを言います。
相続税申告においては、家財道具も相続税の課税対象となり、申告書に、家財道具一式の評価額として、「10万円」や「20万円」などと記載することがあります。
この申告書記載の評価は、過少申告といわれないように便宜的に評価額を計上していることが多く、実際のその分の価値があると査定したうえで行っているものではありません。
調停や審判では、遺産分割の判断をするためには、遺産の範囲を特定することが必要であり、特定された遺産について評価を確定することも必要となります。
日常に使われる家庭用財産について、箸1本、ペン1本まで特定することは不可能ですし、家財道具が特定されているかを判断することも、被相続人と同居していなかった相続人には不可能と思われます。
また、家財道具一つ一つの評価を確定することも不可能と考えられ、また、実際には、価値がゼロ円という家財道具が多いと思われます。
上記のように考えられるため、調停や審判では、相続税申告書に記載があったということで家財道具一式が遺産目録に記載されていたとしても、原則として分割対象の遺産としては取り扱わない形で処理が進められます。
もっとも、遺産分割調停まで進んでいる場合には、当事者間で感情的な対立等もあるため、調停手続き中において、当事者の中より、家財道具の処理を強く希望するようなことがあった場合、調停期日で、遺産分割協議とは別途で、当事者間で、特に処理(取得)を希望する家財道具について、形見分けについての調整が図られることがあります。
形見分けとされるような家財道具については、最終的に遺産分割調停や審判の対象財産とはならないため、どこかの時点で話し合いで解決を図る必要がありますので、最終的な遺産分割による利益を踏まえ、解決を図ることが肝要ではないかと思います。


